乗り物酔い攻略
遠足や旅行に水を差す、子どもの乗り物酔い。せっかくの楽しいイベントが一気に憂
うつなものに転じかねない。
酔い止め薬も効かない重症者の治療も手掛ける石井正則・東京厚生年金病院耳鼻咽喉科
部長に、克服法を聞いた。
●内耳や自律神経を鍛え、感覚のズレを脳が不快と思わなく
なるまで揺れに慣れれば、酔わなくなるという。
・「乗り物酔いは、体のバランスをつかさどる内耳への刺激
と視覚情報とのズレによって生じます」。
・車が止まったり曲がったりする時、内耳には大きな刺激が
加わるが、視界はそれほど動いていないため、感覚にズレ
が生じる。
このズレを脳が「不快」と判断した場合、自律神経が刺激
され吐き気などが生じる。
でんぐり返し法
⇒毎日前後5回/内耳鍛え法
では何をすればよいのか。石井医師が奨励するのが「でんぐり返し」だ。
まず前回りを1回。気持ちが悪くなったら1日1回、不快感を感じなくなるまで毎日
続ける。問題なければ最大5回転でスタート。無理せず、1日1度行えばよい。
回転後に後ずさりすれば、畳1畳分のスペースでできる。
前転5回ができるようになったら、後ろ回りを最大5回まで加える。前後各5回転を
1〜2週間続け順調なら徐々に回数を増やす。前後各10回転に達したらそれ以上増
やさず、毎日続けるとよい。
でんぐり返しに問題なければ、車に乗る練習も加える。
○まず前回りを1回。
・気持ちが悪くなったら1日1回、
・不快感を感じなくなるまで毎日続ける。
・問題なければ最大5回転でスタート。
・無理せず、1日1度行えばよい。
回転後に後ずさりすれば、畳1畳分のスペースでできる。
前転5回ができるようになったら、
○後ろ回りを最大5回まで加える。
・前後各5回転を1〜2週間続け、
・順調なら徐々に回数を増やす。
・前後各10回転に達したらそれ以上増やさず、
・毎日続けるとよい。
○でんぐり返しに問題なければ、車に乗る練習も加える。
記者の長女(6)がでんぐり返しを試してみた。
2歳半から車酔いがひどく、酔い止め薬を飲んでも乗用車だと
15分あまりで吐くほど。
家族で北海道を旅行した際も電車と路線バスで移動するなど
苦労してきた。
5月にでんぐり返しを始め、順調に前後5回まで進めた。
忘れることもあり、2日に1度程度、約3カ月続けた。
乗車練習はほとんどせず、10分程度タクシーに乗る際には
「乗れたね」と声掛けを心がけた。
8月の夏休み、レンタカーに乗せてみたら、薬なしで40分間元気
でいられた。信じられない進歩だ。
そこで気分が悪くなり、薬局にかけ込んで薬を飲んだが、
さらに2時間乗車できた。
気持ちの問題も大きい。
石井医師は「不安があると、脳が内耳への刺激を不快と受け止めやすい」
という。
長女は「でんぐり返しを続ければ大丈夫」という暗示と、
直前の保育園のバス遠足を乗りきったことが、自信につながった
ようだった。
●乗車練習は
不安を解消して「車に乗っても大丈夫」という成功体験を積ませるのが目的だ。
そのためには無理せず「失敗しない時間内に収める」ことが大切だ。
30分前には酔い止め薬を飲ませ、乗車時間は5分でもいい。
万一酔ってもしかるのはご法度。
乗車練習は週1〜2回程度が目安だ。
「酔わない、酔わない」と暗示をかけるのも重圧で、逆効果になる。
●自律神経が繊細だったりうまく調整できない人ほど酔いやすい。
自律神経を鍛える乾布摩擦や運動、水泳などは試してみる価値がある。
トレーニングの効果が出るには3カ月はかかる。
石井医師は「体が慣れれば必ず克服できる。
乗り物酔いは病気ではない。酔ううちは薬を飲み気長に待って」
と強調する。
●車の中では本、DVD、ゲームは見せない。
上を向くと酔いにくいので、天井据え付け型のDVD
視聴機なら気晴らしになる。
酔ってしまったらリクライニングシートを倒して
進行方向に平行に寝かせて、衣服やシートベルト
を緩めるのがよい。
石井医師は「乗り物酔いには体調も影響する。
不安がらせず、楽しく過ごすことを心がけて」と
話している。
乗り物酔い対策の13カ条
・脂肪分の多い食事を避ける
・空腹も食べ過ぎもだめ
・乗る前に排便を。便秘は要注意
・厚着をしない
・寝不足は大敵
・体を圧迫するベルトや下着を避ける
・遠くの景色を眺める
・後ろ向きの席を避け、進行方向が見える前の方に座る
・気分をリラックスさせ、呼吸はゆっくりと
・不安が強い人は事前に酔い止め薬を飲む
・乗り物内で、頭をぐらぐら揺らさない
・気分が悪くなったら、早めにシートを倒すか横になる
・窓を開けて風を浴びる
(石井医師のホームページを基に作成)